こんにちは。
京都オフィスの重永です。
先日、カルビーから新工場を京都に作るというニュースリリースがありました。
カルビーのお菓子大好きな私としては聞き捨てならないニュースです。
参考:日本発の「フルグラ(R)」を京都から世界へ! 京都工場内に新生産棟建設、2018年夏に稼働開始予定
なんでも、現在好評販売中のフルグラの急激な需要拡大に応えるための新たな生産拠点として京都を選んだとのことでした。
もちろんフルグラも大好きです。嬉しいですね。
現在、京都にはカルビーの「じゃがりこ」を作っている京都工場が綾部市にあります。
その敷地内に、新たなフルグラの工場を建設するようです。
フルグラの生産拠点としては、これまで栃木県宇都宮市の清原工場が主力として年間総生産能力340億を上げており、これに今年の8月より稼働する北海道千歳市の北海道工場が年間総生産能力40億を予定しています。
そこへさらに年間総生産能力150億円の京都工場を新設することで、年間総生産能力500億円を目指すというわけです。
フルグラはお隣中国でも大人気で、正式には中国へ輸出していないにも関わらず、個人輸入などにより、すでにかなりの量が出回っているということです。
一時期は中国人による爆買いで品薄になったお店もあるとか…。
ところが、中国では原発事故の影響で福島や東京をはじめとする10都県で製造された食品の輸入が禁止されています。
フルグラの工場もこの禁止地域にあるということで、正式に輸出することができなかったそうですが、すでに需要のあることが判明している巨大マーケットを放置するわけにもいきません。
京都への新工場建設は、この中国マーケットをも見据えたカルビーの設備投資なのですね。
さて、このフルグラですが、実は20年以上昔から販売されており、数年前までは年間30億円くらいの売上規模で横ばいを続けていた商品だったそうです。
それが、ここ数年で一気に300億を超える売上を上げるまでに大成長した驚異の商品です。
この売上急上昇の背景には、マーケティングのお手本のようなカルビーの取り組みがありました。
その最大の仕掛け人は、当時社長に就任したばかりの松本晃会長兼CEO。
元々「フルーツグラノーラ」という名前で販売していた商品を、まずは商品名が長すぎると「フルグラ」に改名。
次に、商品ターゲットを「働く女性」に絞り、働く女性の忙しい朝の「時短商品」と位置づけました。
忙しくて朝食を食べる時間がないという「働く女性」が多かったのです。
「働く女性」にターゲットを絞ったことで、オーツ麦や玄米などの穀類が主原料であるフルグラの特長の一つでもある「食物繊維と鉄分」を多く含むという要素が、便秘や貧血に悩む女性達のニーズにも見事にはまり、大きなストロングポイントになりました。
また、「シリアル」という小さな市場で戦うのではなく、もっと大きな朝食市場の中で、あえて主役にならずに、朝食のヨーグルトと一緒に食べてもらおうという戦略も打ち出しました。
当時のシリアルの市場は約250億円。対する朝食市場は約17兆円と比較にならない大きさです。
脇役になっても十分売り上げを伸ばしていけると踏んだのです。
朝食にヨーグルトを食べる人が多いというデータから、朝食の主役であるヨーグルトのお供にフルグラを勧めていったのです。
これがシリアル市場の中で戦っている限りでは、どんなに頑張っても250億円以下の売り上げにしかならなかったことでしょう。
商品そのものは大きく変わったわけではないのに、ネーミングやターゲット、商品の位置づけや訴求ポイント、広告宣伝の切り口を変えていくだけで、わずか数年で10倍以上もの売り上げ規模に急成長したわけです。
もちろん、しっかりとした営業活動や広報活動もあってのことでしょうが、頭の使い方次第で商品の売り上げが大きく変わるものだということがよくわかる事例ですね。
きっとマーケティングの教科書にも取り上げられることでしょう。
自社商品のマーケティングの参考にしたいですね。
参考記事:“不毛時代”続いたカルビー「フルグラ」がなぜ急激に売れ出したのか?(ITmediaビジネスONLINE)