こんにちは。
京都オフィスの重永です。
オリンピック招致の最終プレゼンで、滝川クリステルが「お・も・て・な・し」とやって見事東京五輪開催決定してから早や4年。
東京オリンピックはまだ3年先ですが、海外からのインバウンドは確実に増加しています。
京都に住んでますと、日常であちこちの観光地の近くを通ることも多く、外国人観光客の数の増加を実感します。
先日、地元テレビ局KBS京都の番組で、京都にやってきた外国人の本音を聞くという企画やってましたが、飲食店のメニューに日本語しか書いてないところがあって、何を頼めばよいのかまったくわからないという声がありました。
せめてメニューに料理の写真が載っていれば、オーダーまでのやりとりがもう少しスムーズに進んだかもしれません。
以前、飲食店のメニュー制作をお手伝いさせていただきましたが、外国人でも指差しでオーダーできるようにと英語と中国語も併記したデザインにいたしました。
また別のお店では、店頭に掲示する英語・中国語併記のメニューポスター制作をお手伝いさせていただきまして、設置後しばらく店先の通りの人の流れを観察させていただきました。
外国人観光客の非常に多いところということもありましたが、通りがかるほとんどの外国人旅行者がメニューポスターに目をやり、何人かに一人は足を止めてじっと見つめ、そのうち何人かはその後店内へと吸い込まれて行きました。
ちょっとしたことですが、これも一つの「おもてなし」ではないでしょうか?
決して英語や中国語使えるスタッフを雇って接客するということばかりが「おもてなし」ではないと思います。
そんな「おもてなし」の心は、なかなか目に見えにくいものですが、そんな「おもてなし」の品質を見える化しようという取り組みが始まっております。
その名も「おもてなし規格認証」。
「おもてなし規格認証」は、日本のGDPの7割を占めるサービス産業の活性化と生産性向上のためにと経済産業省によって創設されました。
この枠組みにより、質の高いサービス提供を行っている事業者を支援し、消費者にとっては高品質なサービスを享受できる機会を増加させようという目論見です。
その目論見の核となるのが、「おもてなし規格認証」に認定されるとサービス事業者に付与される認証マークです。
認証マークには登録無料の「紅認証」と、有償の「★(金認証)」「★★(紺認証)」「★★★(紫認証)」があり、「★(金認証)」や「★★(紺認証)」の認証を受けるには、まず「紅認証」の認証を受けておく必要があります。
消費者はその認証マークをサービス事業者選択の目安にするという仕組みです。
認証マークは、それぞれ下記のように定義されています。
- 「紅認証」…サービス向上の取組に意欲的なサービス提供者
- 「★(金認証)」…お客さまの期待を超えるサービス提供者
- 「★★(紺認証)」…独自の創意工夫が凝らされたサービス提供者
- 「★★★(紫認証)」…お客さまの期待を大きく超える「おもてなし」提供者
ちなみに「★(金認証)」や「★★(紺認証)」は、福岡発祥のラーメンチェーン「一風堂」や、メガネ量販チェーンの「Zoff」、ベネッセグループの学習塾「東京個別指導学院」、輸入食料品を数多く扱うスーパーマーケットチェーンの「成城石井」の一部店舗などが取得しています。
各認証を取得するには、下記の7つに分類された30項目の取組において、一定数以上該当していることが必要です。
また、「★(金認証)」と「★★(紺認証)」については第三者機関にて有償の審査を受ける必要もあります。
(一番上の「★★★(紫認証)」については、まだ詳細検討中のようです)
【情報提供に関する取組】
1.インターネットを活用した情報発信・問い合わせ対応
2.初めてサービスを利用するお客さまに対して、わかりやすく案内・説明などを行うツールの整備(例:パンフレット・ウェブサイト・メニューブック など)
3.従業員同士や地域とのコミュニケーション・情報共有
4.情報発信(例:チラシ、ウェブサイト、SNS※ など)の工夫
※FacebookやTwitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス
【設備に関する取組】
5.ICチップ内蔵クレジットカードに対応した決済端末の導入
6.安定したサービスなどを提供できるようなマニュアルの整備
7.店内外サイン(例:トイレ、非常口、看板など)についての外国語表記、または訪日外国人にもわかりやすいピクトグラム※などの活用
※何らかの情報や注意を示すための視覚記号(サイン)。「絵文字」「絵単語」などと呼ばれる。
8.サービスを利用する上で、外国人が困りそうなことへの備え(例:独自の習慣や文化を知らないための不便やトラブルに備えた対応など)
【職場などの環境改善に関する取組】
9.お客さまや従業員の健康や働き方に配慮した取組(例:分煙もしくは禁煙対応や定期健康診断、テレワークなど)
10.誰もがサービスを利用しやすいような工夫(例:ベビーカー連れの方や障がい者、高齢者などにも利用しやすい工夫)
11.定期的な5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の取組
12.お客さまや従業員の安全対策についての定期的な点検や、必要に応じた設備の見直し・投資
【業務の改善に関する取組】
13.ITを用いた適切な会計処理と、売上集計・仕入(原価)などの効率的な管理
14.バックオフィス業務(会計・税務、総務や倉庫管理など)を効率化する施策(もしくは効率化に向けた定期的な検討)
15.接客レベル・サービスレベルについて定量的に把握し、改善に向けて検討・実施する仕組みづくり
16.サービス品質向上に向けた定期的な取組(従業員教育など)
17.顧客満足度や地域への貢献を高めるためのPDCA(Plan・Do・Check・Actionという事業活動の「計画」「実施」「評価」「改善」サイクル)の仕組みの整備と、その運用
18.従業員の意見を把握し、意見を反映させる仕組みづくりと、その運用(従業員アンケートなど)
【ツールの導入・用意に関する取組】
19.ITなどを活用した、より接客に集中できるような仕組みづくりと、その仕組みに基づくきめ細やかなサービスを行える取組(例:接客用タブレット、顧客情報管理システムの導入など)
20.外国語でのサービス内容表示や説明ツールなどの用意
21.従業員が外国語での接客を行うための支援ツールの用意(例:英会話マニュアル、指さし会話集、アプリなど)
22.外国語版近隣マップの用意(各地域で作成・共有しているものでも可)
【顧客理解・対応に関する取組】
23.経営理念の策定、及び自社の強み・弱みを見極めた上での、想定する顧客(地域コミュニティ含む)に対する戦略づくり(知的資産経営)
24.お客さまや地域コミュニティの声を汲み取り、分析する仕組みづくり(例:アンケート実施や平時におけるコミュニケーションなど)
25.自社がターゲットとする外国人のお客さまの文化などの理解、外国人のお客さまに対しての接客ポリシーの設置
26.外国人のお客さまと必要最低限のコミュニケーションが取れるような従業員教育(例:外国語会話フレーズの教育、No.21の導入ツール(アプリなど)の使い方指導を行っているなど)
27.自社の顧客戦略や顧客ニーズ分析結果などを従業員に共有する仕組みづくりと、その運用
【人材教育・育成に関する取組】
28.「心のバリアフリー」※に関する接客方針を整備し、従業員に浸透させる定期的な取組(指導・教育)
※施設整備だけではなく、高齢者、障がい者などの困難を自らの問題として認識することで心のバリアを取り除き、その社会参加に積極的に協力すること
29.外国人のお客さまに対しての接客ポリシー(指針)を従業員が理解・徹底するための取組
30.外国語によるメール・電話での問い合わせ対応
いくつ合致してたでしょうか?
なんだか大変そうだなぁと感じられたかもしれませんね。
でも、安心してください。
ただ大変なだけではなく、認証を取得するといいこともありますよ。
中小企業等経営強化法による固定資産税の減税措置が検討されています。産経新聞はこれを「おもてなし減税」と呼んでいます。
その他にもIT導入補助金の審査要件に入っていたり、銀行融資の際に政府保証が付いたりなどの資金繰り支援も優先的に受けられるようにする方針だそうです。
※参考:「おもてなし減税」導入検討 経産省 サービス産業の質向上へ 29年度成長戦略に盛り込み(産経新聞)
「おもてなし規格認証」は始まったばかりでまだまだ知名度が低いようですが、これから東京オリンピックに向けて経産省もあの手この手でPRしてくると思います。
「紅認証」の取得については、すでに実施している取り組みだけではなく、今後実施したいと思うという自己適合宣言でもOKです。
無料で取得できますので、登録しておいて損することはないと思います。
特にIT導入補助金の申請を考えていらっしゃる方は、先に「おもてなし規格認証」の申請を行っておくとよいでしょう。
「おもてなし規格認証」について、詳しくは一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が運営する「おもてなし規格認証」の公式サイトをご覧ください。
ちなみに『おもてなし規格認証のうた』っていうのもあるそうですよ。
予算に余裕あるようで羨ましいですね。